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2006年07月05日

◆祇園祭(祗園御霊会)とスサノヲの謎(五)

◆祇園祭(祗園御霊会)とスサノヲの謎(五)


◆祇園祭(祗園御霊会)とスサノヲの謎(五)

◆◇◆祇園祭(祇園御霊会)、山鉾巡行は各鉾町の町衆の祭り八坂神社の神事は、神幸祭と還幸祭

 祗園祭といえば、だれしもが四条通りが歩行者天国となり、街角を埋めつくす人たちでごったがえす宵山のどよめきと、総数三十二基の山鉾が都大路を練り歩く、豪華絢爛な山鉾巡行を思い出す。

 また山鉾をきらびやかに飾る、舶来のタペストリーや国産で最高級の西陣織なども、見る者たちを魅了する。祭りの表舞台に登場する山鉾(※注1)や世界の芸術品は、祭りを豪華に、また華やかに飾っている(山鉾風流)(※注2)。

 豪華絢爛な山鉾巡行が祇園祭と思っている人たちは、祇園祭は七月一日の吉符入りから、二十九日の神事済奉告祭まで(三十一日の疫神社・夏越祭)、約一ヵ月にわたって行なわれる祭礼であり、またこの祭りはもともと、都に疫病をもたらす荒ぶる霊魂を慰撫することを目的とした、いわゆる「御霊会」であることを知る人は少ないと思う。

 元々、この祗園祭は「祗園御霊会(ぎおんごりょうえ)」(※注3)と呼ばれ、昔疫病が流行したりすると、それを起こすと思われてた疫神や御霊の退散を祈願して、祗園社(今の八坂神社)の神輿を担ぎ出し、二条の神泉苑まで練り歩いて、疫神退散の「御霊会」をしたのが始りだそうである。

 ちなみにこの神輿を担ぎ出しのは、祗園社だけではなく、今宮神社でも疫病が流行ると神輿を出し、近く船岡山で「御霊会」をしたそうだ。地名から「紫野御霊会」と呼ばれていた。

(※注1) 祭りを厳かに演出するため、鎌型の鉾が朝廷より下された。これはやがて「馬上十二鉾」と呼ばれ、ひとつ数を増した鉾十三基と神馬五頭の姿に整う。鎌倉時代を通じて祇園祭は、三基の御輿と、「馬長」「渡物」「馬上十二鉾」などの行列が「御旅所」に渡御するという形をとり続けたようである(神輿渡御)。

 鎌倉時代から室町時代の頃、庶民がこの「馬上十二鉾」を真似し始めた。彼らは奇抜な装いで練り歩いたり舞い踊ったりして、人気を集めたが、時代は南北朝の混乱期に入る。この間は、祭りの興奮が暴動に変わることを恐れた幕府の圧力により、祭りは淋しいものになってしまったようである。

 また、貴族勢力の衰退により「馬長」などは姿を消した。しかし、祭りの主役が庶民へと変わり「鉾衆」は恒例化し、祇園祭の新しい形として定着していく。また同じ頃、伝説や物語のさまざまな情景や場面を再現した「作り山」も登場していく。そしてこの「鉾衆」と「作り山」が、現在の「山鉾」のルーツになるのである。

(※注2) 山鉾風流は、室町時代になって、当初からあった神輿渡御を中心とする神事に新たに追加された行事であった。その成立の背景については、京都の商工業に従事する都市民の成熟があったことが指摘されている。

 すなわち、いわゆる「町衆」といわれるそうした都市民の自治的な動向の中で、その自主的な祭礼として山鉾が成立したというのである。

(※注3) 平安時代初期(九、十世紀頃)、京の都には幾度も疫病が流行した。医学の未発達な当時の人々は、それを疫神や祟り神の祟りだと考えた。

 そこで、都のはずれで疫神にお経をあげたり、楽を演奏したりして慰め、町の外へ祓う儀式、「御霊会(ごりょうえ)」を行う。その頃の祇園は京の都の町外れにあたり、この「御霊会」がよく行われた。

 やがて祇園には、疫神を祓う威力があるといわれる、牛頭天王(ごずてんのう)が祀られた。これが祇園社、現在の八坂神社になる。


スサノヲ(スサノオ)


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Posted by スサノヲ(スサノオ) at 00:00│Comments(0)京の民俗学
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