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2006年07月24日

◆京葛野の松尾大社と渡来系氏族・秦氏(四)

◆京葛野の松尾大社と渡来系氏族・秦氏(四)


◆京葛野の松尾大社と渡来系氏族・秦氏(四)

◆◇◆山城国葛野郡の松尾大社と渡来系氏族・秦氏、大年神と白日神と向日丘陵

 『古事記』によると、祭神の大山咋は大年神(『古事記』の神統譜では、速須佐之男命が大山津見の女、名は神大市比売を娶りて生める子としている)と天知迦流美豆比売(あめちかるみづひめ)との間に生まれた子で、竈の神である奥津日子神・奥津比売神の弟であり、稲荷の神である宇迦之御魂神の甥になり、葛野の松尾に坐すとある。

 さらに『古事記』の「大国主神」の章の「大年の神の系譜」の条をみると、「大山咋神、亦の名は山末之大主神。この神は近つ淡海国の日枝の山に坐し、また葛野の松尾に坐して、鳴鏑を用つ神ぞ」とあるように、その鎮座の由来から日吉大社との関係が深かったことがわかる。

 鳴鏑は鏑矢のことで、その矢が松尾大明神であるという伝承が『本朝月令(ほんちょうげつれい)』に引用された『秦氏本系帳』には記されている。

 この大歳神(大年神)に繋がる神々の系譜は、『古事記』が独自に伝えるものである。その大歳神(大年神)の系譜の冒頭に「大国御魂神」と並ぶ神々として「韓神」「曽富理神」「白日神」などが名を連ねていることは注目に値する(『古事記』に、「大年神、神活須毘神の女、伊怒比売を娶りて生める子は、大国御魂神、次に韓神、次に曽富理神、次に白日神、次に聖神」とある)。

 韓神は『延喜式』では、皇室に坐す神三座(園神一座、韓神二座)として祀られている。宮廷祭祀において重視されている神であり、平安時代には十一月の新嘗祭前の丑の日、二月の丑の日には、園韓神祭が執行された。

 貞観の『儀式』には「園神は南に在り、韓神は北に在り」とみえ、『江家次第』には「先に南に供し(園神)、次に北に供す(韓神)」とある。(※注1・2)

※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆

(※注1) 大歳神(大年神)の系譜に、朝鮮半島からの渡来系の神である韓神や曽富理神の生成と並んで白日神が登場するのを、単なる偶然とは考えにくい。

 『古事記伝』や『神祇拾遺』などが説くように、「白日神」が「向日神」であったとすれば、向日神もまた渡来系とゆかりを持つ神であったかもしれない。

 『向日二所社御鎮座記』によれば「神須佐男命(かんすさのおのみこと)の児大歳神(大年神)、活須日神(いくすびのかみ)の女須治曜姫命を娶りて生める子神」が向日神であり、向津日山に鎮座したと伝えている。

 『古事記』の系譜伝承と若干異なっているが、向日神がスサノヲ命(須佐之男命・素盞烏尊)の孫にあたり、大歳神(大年神)の子であるとすることにかわりはない。

 『延喜式』の「神名帳頭註」に向神社について「素戔鳴には孫、大歳には子也、母は須治比女」記している。『神祇拾遺』が「白日神」を「向日神」とし、「向日神社系図、旧事本紀等に向日神と云ふ此也」と記し、「蓋(けだし)向日神とは大歳神の子にて鎮座す、此社の北に当て灰方と云ふ村に大歳神鎮座なれば尤(もっと)も不審もなき也」と述べているのは、向神社(向日神社)の縁起に即しての見解である。

(※注2) 曽富理神の実体は何であったのか。朝鮮半島の重要な史書に『三国史記』と『三国遺事』がある。そののなかの新羅の始祖・赫居世の降臨伝承に関する国名に「徐伐(徐那伐・徐羅伐)sophur」とあり、「神霊の光り来臨する所、具体的には聖林」を意味する。

 ソホリは朝鮮の古語に由来し、ソホリの用例は『日本書紀』巻ニ(神代巻下)「天孫降臨」第六の一書にも記されている。すなわち「日向の高千穂の添山峯」の「添」がそれです。その本文には「添山、此をば曽褒里能耶麻」と明記している。この「添」(ソホリ)は神霊の来臨する聖地を表現している。

 ソホリ・ソホルは後には王都・王京の地を意味するようになり、たとえば百済の王都・泗ビ(夫餘)は「所夫里」と称されたりするようになる。

 『日本書紀』巻一(神代巻上)の「宝剣出現」第四の一書に素戔鳴尊が五十猛神を率いて「新羅国」に降った処を「曽尸茂梨」とし、これを元慶講書のおり(878~882年)に「今の蘇之保留(そしほる)の処か」と解釈されたのも(『釈日本紀』)、新羅の王都を意味しての「ソホリ」と関連する。


スサノヲ(スサノオ)


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Posted by スサノヲ(スサノオ) at 00:00│Comments(0)京の民俗学
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