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2006年07月20日

◆祇園祭(祗園御霊会)とスサノヲの謎(二十)

◆祇園祭(祗園御霊会)とスサノヲの謎(二十)


◆祇園祭(祗園御霊会)とスサノヲの謎(二十)

◆◇◆祇園祭(祗園御霊会)、祇園神は、スサノヲ命(須佐之男命・素戔嗚尊)=武塔神=牛頭天王(3)

 そのことは、『伊呂波字類抄』に、「天竺北方の九相国に吉祥園があり、牛頭天王はその城の王で武塔天神ともいう」と記されており、さらに『備後国風土記』の逸文には、「昔、武塔神が旅の途中、蘇民将来は貧しかったけれども宿を貸してもてなし、弟巨旦将来は富み栄えていたが断ったため、後に疫病が流行したとき、蘇民将来の子孫には茅の輪をつけて災から免れさせたが、その他の者はことごとく死に絶えた」という説話が記されていて、これに「われはハヤスサノヲの神(速須佐雄能神)なり」と云ったとあることによる。

 『釈日本紀』には「これすなわち祇園社の本縁なり」ともあり、古くより、牛頭天王(※注1)と武塔神(※注2)が、スサノヲ命(素戔嗚尊)(※注3)と習合されていたことがわかる。昔は、疫病は死に直結する恐ろしい災厄であった。だから、疫病を鎮める力を持つ神に対する信仰は、大変に篤いものがあった。そうした神様が京都八坂神社の牛頭天王(ごずてんのう)であり、武塔(むとう)神であり、スサノヲ命(須佐之男命・素戔嗚尊)であったのだ。

※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆

(※注1) インド仏教の祇園精舎の守護神・牛頭天王は、中国に渡り、民間信仰の道教と習合する。そして、牛頭天王は、道教の冥界の獄卒となる(もともとは「地獄」の獄卒)。その他にも、道教と習合した仏教には、馬頭羅刹(めずらせつ)や閻羅王(閻魔)も登場することになる。その牛頭天王・馬頭羅刹が日本に伝来すると、それぞれ牛頭天王・馬頭観音(ばとうかんのん)へと変わっていくのだ。そこには、農耕文化と天神信仰との関わりがみられる。

 天神信仰では、農耕の際、雨乞いの祭りをするのだが、そのときに犠牲を捧げるのだそうだ。それが牛や馬であった。牛・馬は家畜というよりも、もとは犠牲の動物だったのだろうか。そうしたことからか、牛・馬は神社と深い因縁があるようになる(「絵馬」は元来、馬の犠牲の名残だ。京都では祈雨止雨の祈祷の際、馬が奉納されたそうである)。古くは、「祇園社」では、牛を祭って天神の怒りを鎮め、疫病を防止しようとしたのである。

(※注2) 『備後国風土記』は次のように語っている。「昔、北の海にいた武塔神(スサノヲ)が、南の神の娘に求婚に来た折り、日が暮れてしまった。丁度そこに住んでいた、蘇民将来、巨旦蘇民の兄弟に宿をこうた。弟の巨旦蘇民は、たくさんの家や倉などを所有している豊かな生活にもかかわらず、宿を貸さなかった。兄の蘇民将来は、子沢山で食べる物もない貧さなのに、快く武塔神を泊めた。その後、武塔神は再び蘇民将来を訪れ、『茅の輪を腰の上につけなさい』といった。その夜、武塔神は、この茅の輪を身に付けていた蘇民将来の子孫以外を悉く殺してしまったのである。そして次のように言う。『後の世に病気などが流行った時、蘇民将来の子孫といって、茅の輪を腰に付ければこの害を逃れることができる』と…。この神話伝承に基づき、茅の輪神事や蘇民将来に関する行事が行われている。

(※注3) かなり早くから牛頭天王=武塔神とスサノヲ命(須佐之男命・素盞嗚尊)とを同一視する習合思想が流布していたように思われる。古代の人は、『記・紀』神話(荒れすさぶる神が、追放され辛苦を重ねた末、心を清めて、この世を救う善神・英雄神となるスサノヲ神話)を通して、スサノヲ命(須佐之男命・素盞嗚尊)に威力のある神、疫病防除の霊験を持つ神と信じたのであろう。


スサノヲ(スサノオ)


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Posted by スサノヲ(スサノオ) at 00:00│Comments(0)京の民俗学
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