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2006年07月21日

◆京葛野の松尾大社と渡来系氏族・秦氏(一)

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◆京葛野の松尾大社と渡来系氏族・秦氏(一)

◆◇◆山城国葛野郡の松尾大社と渡来系氏族・秦氏、氏神・松尾大社の創建

 山城国葛野郡の松尾大社(京都市右京区嵐山宮前)は、京都嵐山に近い松尾山の麓に鎮座する旧官幣大社で、京都でも古い神社の一つである。祭神は、大山咋命(おおやまくい)、市杵嶋姫命(いちきしま、中津嶋姫命) を祀る。

 社伝によれば、文武天皇大宝元年(701年)、秦忌寸都理(はたのいみきとり)が勅命により、古代より葛野一帯で信仰されていた松尾山大杉谷の磐座の神霊を、渡来系氏族・秦氏一族の総氏神として勧請して社殿を建て、同族の知満留女(ちまるめ)を斎女(いつきめ)として奉仕させたとある。

 また天智天皇七年(668年)、筑紫の宗像から嵐山に宗像三女神の市杵嶋姫(海上交通に関係の深い神、アマテラスとスサノヲ命との誓約で生まる)を勧請したとの伝えもある(市杵嶋姫=別名:中津島姫命を勧請した時期に、天智天皇は日吉大社に大和の三輪大神を勧請している。大津京遷都、即位の時に強力な地主神に加え、さらに強力な神々を加えているのだ)。

 秦忌寸都理は「饒速日命之後也」と秦氏のなかで唯一神別としてみえる。松尾大社は、渡来系氏族・秦氏の氏神として篤く信仰されてきたのである。

 平安京遷都後は、皇城鎮護の社として「賀茂の厳神、松尾の猛霊」と並び称され、『延喜式』では名神大社に列せられている(貞親元年、正一位に叙せられ後勲一等となる)。また二十二社のうち伊勢、石清水、賀茂と共に上七社の一に数えられた。

 寛弘元年一条天皇の行幸をはじめ、以後縷々天皇の行幸があった。中世以降は酒の神としても崇敬され、境内に湧き出る霊泉「亀の井」の水は、醸造の際に加えると酒が腐らないといわれ、全国の醸造業者の篤い信仰を受けている。

 宝物館に安置された3躯の神像(老年男神=大山咋神、壮年男神=月読尊?、女神=市杵嶋姫命)は、かつて丹朱が塗られて赤々と輝いていたそうだ。平安初期の一木造りの等身大坐像で、日本では最も古い神像とされ、強い畏怖の念を抱かせる。(※注1・2)

※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆

(※注1) 『古事記』によると、祭神の大山咋命(おおやまくい)は、大歳(大年)神(スサノヲ命の子)が天知迦流美豆比売(あめちかるみづひめ)を妻として生まれた御子神としている。この大山咋命については「奥津日子神。次に奥津比売命、亦の名は大戸比売神。此は諸人の以ち拝く竈神ぞ。次に大山咋神、亦の名は山末之大主神。此の神は近淡海国の日枝の山に坐し、亦葛野の松尾に坐して、鳴鏑を用つ神ぞ」と伝えている。

 この記述から、大山咋神は、穀物の神である大歳(大年)神の御子神であり、別名を山末之大主神であること、近江のまた日枝の山(比叡山、八王子山)と松尾山に鎮座して、鳴鏑(山神=雷神=天神=水神=龍神)を持つとある。

(※注2) 秦氏は、秦の始皇帝の子孫とされ、そのために中国系の渡来人といわれたこともあったが、実際には、朝鮮半島から先進技術をもって渡来した集団である。『日本書紀』の応神天皇十四年条には百済から「帰化」したとあり、また、新羅系の渡来人とする見方もある。

 農耕技術 ・ 土木技術 ・ 養蚕や機織りの技術・酒造の技術などともに渡来した秦氏は、5世紀ごろには、京都盆地の西部、現在の京都市右京区や西京区を中心とする地域に定住したと思われる。彼らは、「葛野大堰(かどのおおい)」 という堰を桂川に築いて、嵯峨野一帯に水利を施し、水田の開墾を行なった。

 雄略天皇の時代には、秦酒公(はたのさけぎみ)という人がいて、大和朝廷に絹糸を献上したと伝えられる。また、聖徳太子のころには、秦河勝(はたのかわかつ)が、秦一族の首長であった。弥勒菩薩で有名な広隆寺を建立したのも秦河勝である。


スサノヲ(スサノオ)


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Posted by スサノヲ(スサノオ) at 12:00│Comments(0)京の民俗学
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